数論のための基本的な定義

「数論とPython」シリーズ 2018/11/05

数論を学んでいくための基礎的な定義を学んでいきます。 整数, 有理数, 実数などの数の種類と集合論的な記号を導入します。

まずは定義から

足並みをそろえるために数論で使う言葉(専門用語)の定義から始めましょう。数学の専門用語の中には日常会話で使われるような言葉もありますが,数学の中ではきっちりと決まった特定の意味を持ちます。定義をしっかりと覚えていないと何をやっているのか分からなくなってしまいますので定義は大切にしてください。幸い,数学は他の分野と比べて専門用語は少ないので一つ一つ確実に覚えましょう。

数の種類

ますは,数の種類から始めましょう。日常生活でよく目にする数たち1, 2, 3, 4, 5など数は”自然数”と呼ばれています。数字の1から始まって,1ずつ増えていく数たちが自然数です。

「7は自然数です」などのように使います。

0(ゼロ)も数の一つですが,自然数には含めません。

マイナスの数もありますね。-1, -2, -3などです。これらも自然数ではありません。

マイナスの数-1, -2, -3や0,そして自然数も含めたこれらの数のことを整数と言います。

「-9は整数ですし,0も整数」,「6も整数」です。

注意してほしいのは,どんな自然数も整数であるということです。11は自然数であるし,整数でもあります。ただし逆は言えません。整数だからといって自然数だとは限りません。例えば,-3は整数ですが自然数ではありません。

自然数のことを正の整数と呼ぶこともあります。またマイナスの整数のことを負の整数とも言います。

クイズ

少し用語になれるためにクイズに答えてみてください。

正誤問題

次の文章が正しいか間違ってるか判断してくだい。

  1. 3は整数だが-3は整数ではない。
  2. -7は負の数なので自然数ではない。
  3. -2+5の計算結果は整数である。

次の問に答えてください。

  1. 5より小さい整数の中で一番大きい数はなんですか?
  2. -3より大きい整数の中で一番小さい数はなんですか?
  3. 一番大きい負の整数はなんですか?

クイズの答え

まずは正誤問題の答えから。3も-3もどちらも整数ですから1番は間違っています。整数は自然数とゼロと負の整数全部のことでしたね。2番は正しい文章です。自然数には負の整数は含めません。3番目はまず,-2+5=3であり,3は整数であるので正しい文章だとわかります。

次の3つの問題は数直線を使って考えるとわかりやすいです。 横一直線を描いて,真ん中くらいに数字のゼロを描いてください。その右側に1から順番に2, 3, 4と自然数を並べていきます。ゼロの左側にはまず-1,その左に-2と並べていきます。すると整数が一直線上に大きさ順に並びます。この線のことを数直線と呼びます。

さて,5より小さい数は数直線において5よりも左に並んでいる数たちです。5”より”小さいとは5自身は含みません。数直線に並んでいる数は右に行くにつれて大きくなっているので4が5より小さい整数の中で一番大きいことがわります。

同様の考察を次の問題でもしてみましょう。まず-3より大きい数は数直線上で-3よりも右側にある数たちです。その中で一番小さいものを探すのですから,数直線上で一番左にあるものを選べばいいことになります。よって-2が-3よりも大きい整数の中で一番小さいことがわかります。

最後の問「一番大きい負の整数はなんですか?」に答えましょう。負の整数は数直線でゼロより左側に並んでいますね。その中で一番大きい数は一番右に位置しているはずです。ゼロは負の整数ではありませんから,-1が一番大きい負の整数であることがわかります。

ついでに

クイズの最後の問題では-1が負の整数で一番大きいと説明しましたが,では負の整数で一番小さい数はなんでしょう?数直線でどんどん左に進むとどんどん小さい整数に出くわします。どんなに小さい負の数を見つけたとしても,その数から1を引くとより小さい負の数が見つけられます。つまり,一番小さい負の数なんていうものは存在しないことがわかりました。同様に自然数も無限に多くあることがわかります。

数の集合の記号

自然数ひとつひとつはとても個性があり可愛らしいのですが,全体がなすハーモニーも素敵です。 自然数すべてをひとつのものとして考えると便利なことがあります。数学ではものの集まりのことを集合と呼びます。すべての自然数の集合を数学者は\(\N\)と書きます。少し太めなアルファベットのNです。集合に含まれるものを要素と呼びます。\(\N\)の要素は1, 2, 3, …などのすべての自然数です。これを数学的に書くと

\[ \N = \{1, 2, 3, 4, 5, \cdots \} \] となります。

整数全体の集合のことを\(\Z\)と書きます。上と同様に書くと

\[ \Z = \{\cdots, -2, -1, 0, 1, 2, \cdots\} \] となります。

これら\(\N\)\(\Z\)の記号は数学者は日常的に使います。 その一方で負の整数全体を表す記号は特に決まっていません。

要素の記号

「11は自然数である」をもう少し硬い言い方をすると「11は自然数の集合\(\N\)要素である」と言い換えられます。 要素の代わりにも使います。 これらの文言は数学ではよく使われているのでできるだけ書く労力を減らしたいですね。 そこで数学では「11は自然数の集合$\N$の元である」ということを表すのに \[ 11 \in \N\] と書きます。 だいぶすっきりしましたね。

次に「-13は自然数でない」という文を考えましょう。これは, 「-13は自然数の集合\(\N\)の要素ではない」とも言えます。 数学記号では \[ -13 \notin \N\] と書きます。

要素である\(\in\)に線を描いて否定して, 要素でない\(\notin\)という意味になるんですね。

方言

さて\(5\in \N\)は「5は自然数である」と同等の言い方だと学びました。 数学者の中には数字をもっと生き物らしく, 可愛らしい個性のあるものと捉えている人も大勢います。 そして自然数全体$\N$は数が生息する世界と考えます。 そのような人たちは\(5\in \N\)のことを「5は\(\N\)に住んでいる」とか「5は\(\N\)から来た」などと表現します。

任意の自然数の話

数論では2や3といった特定の整数だけではなく,どんな整数に対しても成り立つ事実を研究したりします。 「どんな整数」のことを「任意の整数」とも言います。 そこで数学では次のようなトリックを使います。

\(n\)を任意の整数とする。 すると以下のようなことが次のようにしてわかる。 …」

ここで\(n\)はすべての整数を代表しています。 \(n\)は2かもしれないし,3かもしれない。 でもその後の議論は\(n\)の値が実際なんであっても成り立つ議論でなくてはいけない。

別にいつでも\(n\)を使わなければいけないというルールはありません。 \(a\)\(m\)なども使ってもいいのです。

一方で, 自然数の集合の\(\N\)はNで決まっていて他のアルファベットに置き換えてはいけませんよ。

偶数と奇数

ここでは偶数と奇数を使って, 今まで習った用語や記号の復習, そして証明問題に取り掛かってみましょう。

まずは偶数と奇数の定義から。 偶数は2で割り切れる整数のことで, それ以外(つまり2で割ると1余る数)のことを奇数と呼びます。

例えば, 6は2で割り切れるので偶数, 7は2で割ると1余るので奇数ですね。 念の為,チェックすると \[ 7 = 2 \times 3 + 1\] で商が3となり余りが1ですね。

次の考察のために\(n\)を任意の偶数とします。 \(n\)は偶数ですから2で割り切れる数です。 数の割り算を思い出すと

\[ n = 2 \times \text{商} + \text{余り} \] とかけます。 \(n\)は偶数なので余りはゼロでした。 ここで商のことを\(q\)と書きましょう。 \(q\)は商なので整数です。 上の式は \[ n = 2 \times q + 0 \] になり,つまりは\(n=2q\)となります。

ここまでにわかったことは「どんな偶数\(n\)に対してとある整数\(q\)があり\(n=2q\)と書ける」ということでした。 逆にもし\(n=2q\)と書けるなら(ここで\(q\)はとある整数)\(n\)は偶数であることもすぐわかります。

今度は任意の奇数\(m\)に対して同様の議論をしてみましょう。 \(m\)は奇数なので2で割ると1余る整数です。 2で割った商を\(p\)と書くと,割り算の式から \[ m = 2p + 1 \] と書けることがわかります。

これらの考察を用いて次のよく知られている偶数と奇数の基本的な性質を証明してみましょう。

偶数と奇数の基本的な性質の問題

  1. どんな偶数を2つかけ合わせても結果は偶数
  2. どんな奇数2つをかけ合わせても結果は奇数
  3. 偶数と奇数を書けると結果は偶数

2つの数をかけ合わせた結果の数を積ともいいます。

ここではまず二番目の命題を証明してみたいと思います。 では証明を始めます。

奇数×奇数=奇数

最初に\(m\)\(n\)をそれぞれ任意の奇数とします。 上で考察したことより奇数\(m\)に対してとある整数\(p\)があって\(m=2p+1\)とかけます。 同様に奇数\(n\)=に対しても,とある整数\(q\)があって\(n=2q+1\)とかけます。

証明したいことは奇数\(m\)\(n\)の積も奇数であること。 では上で得た式を使って積$mn$を計算していきましょう。

\begin{align*}
mn &= (2p+1) (2q+1) && \text{上で得た式より}\\
&= 4pq + 2p + 2q + 1 && \text{積を展開}\\
&=2(2pq + p + q) +1
\end{align*}

最後のステップは最初の3つの項から2をくくり出しました。 ここで得られた最後の式をもう少し見やすくするために\(2pq + p + q\)\(r\)と置きましょう。 つまり\(r=2pq + p + q\)です。 \(p\)\(q\)も整数ですから, \(r\)も整数であることがわかります。

つまり積は\(mn=2r+1\), \(r\)は整数, の形に書けることがわかりました。 これはつまり\(mn\)が奇数であることを示しています。 これが私達が示したかったことでした。 以上で証明を終了したいと思います。

練習問題

残りの二問も同様の議論で証明することができます。 実際に, 紙とペンを用意して自分の手で証明をかきあげてみてください。

もっとあるよ数の種類

これまで私達は整数しか扱ってきませんでしたが, この世には整数ではない数も数多く存在します。 日常生活でも, 「体温が37.2度で風邪気味」みたいに小数を使う場面もあると思います。

\(m\)を整数, \(n\)をゼロでない整数としたときに分数\(m/n\)で表される数のことを有理数といいます。 例えば, \(1/2\)\(-3/4\)などは有理数です。 このように2つの整数を使って分数の形にかけない数も存在します。 有名な円周率の\(\pi\)もそのような数です。 これらの数は無理数と呼ばれています。

どのような整数\(n\)\(n/1\)という形に描くことができるので整数は有理数です。

有理数も無理数も合わせて実数と呼びます。 実数全体の集合は\(\R\)と書きます。日常で見かける数はほとんどが実数だと思います。 二乗すると\(-1\)になるような数を含む複素数など, 数学ではより豊富な数体系を学びますがこれらについてはまた今度の機会に。

四則演算

これからの議論では数の四則演算(+,-,\(\times\), ÷)には馴染みがあるとして進めていきたいと思います。 足し算, 掛け算など学校で習う計算に慣れていればOKです。

小学校から馴染みがあるこれらの演算ですが, 数を研究しているとまだまだ未知なことがたくさんあることがわかってきます。 例えば, 数論の難問は究極的には足し算と掛け算の関係を深く突き止めることにあると主張する数学者もいます。

これから一緒にさまざまな謎に挑戦していきましょう。

練習問題で実力をつけましょう。

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素数と合成数

素数と合成数

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