完全数とは自分自身を除いた正の約数の和が, それ自身に等しいような自然数のことを言いました。 約数の総和関数\(\sigma(n)\)を使うと, 自然数\(n\)が完全数とは\(\sigma(n)=2n\)となることでした。
「完全数の性質と未解決問題」でPythonプログラムを使っていくつかの完全数を(再)発見してきました。 ここに最初の8個の完全数を並べてみます。
6, 28, 496, 8128, 33550336, 8589869056, 137438691328, 2305843008139952128
奇数の完全数が存在するかどうかは未解決問題なので, もちろんこれらの完全数は偶数の完全数です。 完全数に限らない一般の偶数を考えると, 一の位は0, 2, 4, 6, 8のどれかです。 これを念頭に上の完全数をもう一度見てみると, どの完全数も一の位が6か8であることに気づくと思います。 そこで次の定理を証明してみます。
偶数の完全数の一の位は6か8となる。
以前証明した偶数の完全数とメルセンヌ素数の関係を思い出しましょう。
どんな偶数の完全数\(n\)に対してもメルセンヌ素数\(2^p-1\)が存在し\(n = 2^{p-1}(2^p-1)\)と書ける。
もう一つここで述べておくと
メルセンヌ素数\(2^p-1\)の指数\(p\)は素数である必要がある。
これらの証明は以前の記事「完全数の性質と未解決問題」を参考にしてください。
では定理の証明に取り掛かりましょう。
\(n\)を偶数の完全数とします。 先ほどの事実Aより, あるメルセンヌ素数\(2^p-1\)が存在して\(n = 2^{p-1}(2^p-1)\)と書けます。 また事実Bからこの\(p\)は素数です。 もし\(p=2\)の場合は完全数\(6\)に対応していて, この場合はもちろん一の位は6なので定理は成り立っています。 そこで以下では\(p\)は奇素数として証明を進めて行きます。
完全数\(n\)の一の位の数字が6か8であると証明することは\(n\equiv 6 \pmod{10}\)または\(n \equiv 8 \pmod {10}\)を示すことと同値であることに注目します。
簡単な計算で\(2^4 \equiv 1 \pmod 5\)となることがわかります。 \(p-1\)が偶数なので\(p-1=4k\)または\(p=4k+2\)となる整数\(k\)が存在します。
まずは\(p-1=4k\)の場合を考えてみましょう。 このとき \[ 2^{p-1} = 2^{4k} = (2^4)^k \equiv 1^k \equiv 1 \pmod 5\] となり, これを使って \[ 2^p-1 = 2\cdot 2^{p-1} -1 \equiv 2 \cdot 1 – 1 \equiv 1 \pmod 5\] を得ます。
これら2つを使って \[ n =2^{p-1}(2^p-1) \equiv 1\cdot 1 \equiv 1 \pmod 5\] が従います。 この\(n \equiv 1 \pmod 5\)から\(n\equiv 1 \pmod {10}\)または\(n\equiv 6 \pmod {10}\)がわかります。 (ここがよくわからない場合は下の補足参照してください。) しかし, 今\(n\)は偶数なので\(n \equiv 1 \pmod {10}\)はありえませんので\(n\equiv 6 \pmod{10}\)となり\(n\)の一の位は\(6\)となることがわかりました。
次に\(p-1=4k+2\)の場合を考えてみましょう。 このとき \[ 2^{p-1} = 2^{4k + 2} = 4 \cdot (2^4)^k \equiv 4\cdot 1^k \equiv 4 \pmod 5\] となり, これを使って \[ 2^p-1 = 2\cdot 2^{p-1} -1 \equiv 2 \cdot 4 – 1 \equiv 7 \equiv 2 \pmod 5\] を得ます。
これらを使うと \[ n =2^{p-1}(2^p-1) \equiv 4\cdot 2 \equiv 3 \pmod 5\] となることから\(n\equiv 3 \pmod{10}\)または\(n\equiv 8 \pmod{10}\)となることがわかります。 \(n\)が偶数であることから\(n\equiv 8 \pmod{10}\)のみが可能であることがわかります。 ゆえに, \(n\)の一の位が\(8\)であることが示されました。
よっていずれの場合でも\(n\)の一の位は6か8であることが証明されたので, 以上で定理の証明を終わりにしたいと思います。
証明中に「\(n\equiv 1 \pmod{5}\)ならば\(n\equiv 1 \pmod{10}\)または\(n \equiv 6 \pmod{10}\)」という事実を使ったので, これがピンと来なかったとい場合は以下の証明を読んでみてください。
\(n\equiv 1 \pmod{5}\)なので\(n=5m+1\)となる整数\(m\)が存在します。 この\(m\)の偶奇で場合分けをします。
まず\(m\)が偶数のときを考えます。 このとき\(m=2l\)となる整数\(l\)があります。 そして \[n=5m+1=10l+1\] となることから\(n\equiv 1 \pmod{10}\)となります。
次に\(m\)が奇数のときを考えます。 このときは\(m=2l+1\)となる整数\(l\)が存在します。 そして \[ n=5m+1=5(2l+1)+1=10l+6\] となることから\(n\equiv 6 \pmod {10}\)がわかります。 以上で補足の証明を終わります。
実は定理の証明をよく吟味してみると, 定理で述べたことよりもより詳しい情報を証明していることがわかります。 すなわち, 偶数の完全数をメルセンヌ素数\(2^p-1\)を使って\(2^{p-1}(2^p-1)\)と表したときの\(p\)が\(p\equiv 1 \pmod 4\)のときは一の位は6になり, \(p \equiv 3 \pmod 4\)のときは一の位は8になるということが証明されています。